第44回:メタボリック症候群とアルツハイマー病に関係がありますか?

 健康診断にも腹囲の測定が加わったようですが、メタボリック症候群は、アルツハイマー病と関係がありますかという質問をいただきました。

メタボリック症候群は、どんな病気?

 メタボリック症候群は、病気ではありません。腹囲(内臓肥満)、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血圧、そして空腹時血糖値がある一定以上の値(HDLコレステロール値は一定の値以下)の状態を言っています。メタボリック症候群であると、将来心血管系の病気(狭心症、心筋梗塞など)を発症する危険性が高いということがあります。したがって、メタボリック症候群の状態の人は、腹囲を減らしたり、中性脂肪の値を減らし、HDLコレステロール値を増加し、血圧を正常にコントロールして、空腹時血糖値を正常にしておくと、将来の心血管系の病気の発症予防につながるという意義があります。

アルツハイマー病との関係は?

 すべての研究結果が一致しているわけではありませんが、肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などは、アルツハイマー病と関係があるということを示している研究があります。内臓肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症のいくつかを持っている状態を示すメタボリック症候群も、アルツハイマー病と関係があるのではないかと推測できます。

 昨年、アルツハイマー病とメタボリック症候群の関係について発表されたフィンランドでの研究を紹介します。

その研究では

 無作為に選ばれた980人の高齢者について非アルツハイマー病例を除いた後、69歳から78歳の男性337人、女性622人の計959人が研究の対象となりました。

  この研究でのメタボリック症候群の診断基準は、日本の基準と異なっています。この研究では、以下の状態が3つ以上ある状態をいっています。ウエストの周りが男性で102cm以上、女性で88cm以上、中性脂肪は150mg/dl以上、HDLコレステロールは、男性で40mg/dl未満、女性で50mg/dl未満、血圧は収縮期130mmHg以上または拡張期85mmHg以上、そして空腹時血糖は110mg/dl以上としています。

 その結果、418人(43.6%)にメタボリック症候群がありました。45人(4.7%)が、アルツハイマー病と診断されています。アルツハイマー病はメタボリック症候群のある例で7.2%、ない例では2.8%で、メタボリック症候群のある例でアルツハイマー病が多いという結果でした。女性のアルツハイマー病例の81.3%にメタボリック症候群があり、アルツハイマー病でない女性の48.8%にメタボリック症候群がありました。男性のアルツハイマー病例ではメタボリック症候群は30.8%、アルツハイマー病でない人には30.1%仁メタボリック症候群があり、有意な違いはありませんでした。高齢者では、メタボリック症候群はアルツハイマー病と関係がありそうで、特に女性では関係が強いということが示されています。

メタボリック症候群もアルツハイマー病と関係があるかもしれない?

 まだ研究もほとんど無く、結論は出ていませんが、もしメタボリック症候群と関係があるのなら、アルツハイマー病の予防に繋がってきます。


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