第47回:アルツハイマー型認知症の始まり

 今回は、アルツハイマー型認知症はどのような症状で始まりますかという質問に答えます。

記憶障害

 診察室5にも書きましたが、もの忘れで始まることがほとんどです。ものをしまった場所を忘れてしまう人では、探し物していることが頻繁に見られるようになります。聞いたことや話したことを忘れている時は、約束を守らなかったり、同じ事を聞いたり、言ったりするようになります。

あれ、これ、それ

 使い慣れてるはずの言葉がでなくなるのもよくある症状です。その場合には、話していると、あれとかそれとか言う代名詞が多くなってきます。
病気が始まって間もないときは、おそらく物忘れの頻度も少なく、歳によるもの忘れとの区別がつきにくいと思います。時間が経つにつれ、徐々に頻度が多くなってきますから、周囲の人がおかしいと気づくようになります。

もの忘れのエピソード

 私の外来を受診した患者さんの家族が、最初に変だと感じたエピソードをいくつか紹介します。
中学校の国語の先生ですが、授業で同じ事を話したり、前回の授業でどこまで進んだかわからなくなり、生徒から変であると気づかれた人がいした。大学の名誉教授の方の場合は、定期的な会合に現れないことが多くなり、会合の日でないときに来てしまうということで、気づかれています。会社の社長さんで、朝礼のときに話の脈絡がなくなり、何を言っているのか理解しにくいということで気づかれいます。タクシーの運転手さんで、無線を受けた後どこに行くのかわからなくなり、何度も聞き直すということで気づかれた人もいます。

仕事をしていない人では、発見が遅くなる

 社会生活をしている人では、びょうきにより仕事に支障が出てきますから、比較的早く病気であることがわかります。しかし、退職をして家で過ごしている人や、簡単な家事だけをしている場合は、変であることに気づかれるのが遅くなることもあります。

もの盗られ妄想

 以前にも話をしましたが、もの盗られ妄想で気づかれる人も少なくありません。私の外来を受診した患者さんで、もの盗られ妄想で気づかれた方のエピソードを紹介します。買ってきたものを部屋に置いておくと隣の家の人が家に上がり込んで、盗ってしまうという人がいました。銀行から300万円おろして、家に置いておいたところ、娘が盗っていったと言って、何回も交番に届けていた人がいました。自分で使った事を忘れ、財布にお金がないと夫が盗っていたという人がいました。

歳のせいではない

 今まで紹介してきたエピソードは、もの忘れによるものです。病気によるもの忘れなので、生活や人とのる気合いの中で支障が生じています。歳によるもの忘れの場合は、仕事や普段の生活において支障はなく、もの盗られ妄想もありません。
もの忘れにより生活に支障を来している時は、認知症の疑いがありますから、かかりつけ医に相談するようにして下さい。


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