第28回:脳出血の手術について

 前回は、脳出血になった星野さんの話をしました。この話を読んだ方から、次のような質問が来ました

 「イスラエルのシャロン首相は脳出血で手術を受けたとニュースで知りましたが、脳出血の時は手術をして治療した方がよいのでしょうか?」という質問です。

脳出血の時にはどのような手術をするのでしょうか?

 脳出血の原因により違ってきますが、一番多い高血圧による脳出血について話します。

 高血圧が原因の時は、場合によっては、脳の中に出血して溜まった血液(血腫)を除去したり吸引したりします。脳室の中にも出血したときは、脳室ドレナージといって、脳出の中にチューブを挿入して、血液の混じった脳脊髄液を排出することがあります。

 CTやMRIを使って正確に血腫部位から血液を吸引したり、神経内視鏡下で血腫を除去するなど正確に、侵襲を少なくした手術が行われています。

脳出血の時は、手術をしたほうが良いのでしょうか?

 脳出血なら手術をするということではありません。一般的には、小さな出血(血腫の量が10mlより少ない)や、症状が軽度の時は、手術をしません。そして、患者さんが重症で昏睡状態の時も手術はしません。
 手術をしたほうがしないときよりも機能の改善(上下肢の麻痺の改善など)がよいということや、生命予後を良くする(死亡することを少なくする)ということがあるときに手術が考慮されます。

手術により治療されるのはどのようなときでしょうか?

 これまでに行われた手術をしたときとしなかったときの違いについての研究結果を基にして、出血の場所(図)、重症度、年齢などによって手術が考慮されることがあります

                 

図:脳出血の部位

 被殻の出血では、重症度が中程度で、血腫量が30ml以上で、血腫により脳の圧迫が強いときに手術が考慮されます。

 視床の出血では、血腫を吸引する手術はしませんが、脳室の中にも出血していて、脳室が拡大しているときは脳室内にチューブを入れて排出する手術が考慮されます。

 皮質下の出血では、血腫量が50ml以下で、意識がはっきりしていないけれども昏睡ではないときに、年齢が60歳以下なら手術が考慮されます。

 小脳の出血では、血腫の大きさが最大径3cm以上で、症状が悪くなってきているときや脳幹が血腫で圧迫されて、髄液の流れが障害されて脳室が大きくなってきているとき(水頭症)には、手術が考慮されます。

 脳幹の出血では、手術はしません。

 シャロン首相の脳出血はどのようなものであったかわかりませんが、ニュースから想像するとかなり重症だったようです。脳出血の原因もわかりませんが、機能を良くするための手術というより、生命予後を少しでも良くするための手術だったのではないかと思います。

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