第29回:認知症にならないようにするには

 私の外来に通院している73歳の豊田さん(仮名)は、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)にならないために、テレビ番組からの健康についての情報や、友人から情報をもらっては、健康食品を試みたり、外国から薬を取り寄せたり、頭の働きをよくするゲームをしています。
 豊田さんは、糖尿病と高血圧症の治療を受けているのですが、最近、ある健康食品を摂れば、食事のカロリーを守る必要もなく、血圧の薬も糖尿病の薬も必要ないと友人から教えてもらい、薬を服用することをやめてしまいました。ですから、血糖は、目標値よりも高く、血圧も目標値より高いことが最近続いています。

高血圧や糖尿病はアルツハイマー病と関係はないでしょうか?

先日、豊田さんに、正しく薬を服用するように伝えました。すると、豊田さんは、高血圧や血糖の高いことは脳卒中を起こすことと関係がありますが、アルツハイマー病とは関係がないと思っていると言うことでした。そして、アルツハイマー病になりたくないので、情報を得ては、役に立ちそうなことを試みていると言っていました。

 認知症のない70歳の住民を対象にして、高血圧症と認知症の関係を検討したスウェーデンで行われた研究があります。79−85歳で認知症になった人々は、70歳時の血圧は認知症にならなかった人達より血圧が高かったことがわかりました。79−85歳でアルツハイマー病になった人達では、70歳時の拡張期血圧が高く、高血圧とアルツハイマー病の発症に関係のあることが示されています。

 オランダでは,住民を対象にした疫学的研究がたくさん行われています。その中の一つに糖尿病と認知症の関係をみた研究があります。糖尿病のある692人を平均2.1年間観察すると、この期間に126人が認知症になりました。糖尿病があると、アルツハイマー病と脳血管性認知症になる危険が、糖尿病のない人の約2倍高いことがわかりました。

 脳血管性認知症は原因が脳血管障害ですから、高血圧や糖尿病が危険因子であることは広く知られていると思います。糖尿病や高血圧が同時にアルツハイマー病の危険因子であることを知らなかった人も多いと思います。

認知症にならないためには

認知症にならないようにするには、発症と関係のある危険因子を少しでも少なくしておくことが大切です。

 脳血管性認知症の予防には、脳血管障害にならないようにするのが一番です。従って、糖尿病、高血圧症、心房細動などの危険因子のコントロールが大切です。脳梗塞の予防には、抗血小板薬や抗凝固薬の投与が役立つこともわかっています。

 アルツハイマー病の危険因子には、加齢や遺伝因子がありますが、歳を取ることや遺伝因子については何もできません。しかし、高血圧,高脂血症,糖尿病,動脈硬化などがアルツハイマー病になることと関係があることがわかってきていますから、それらのコントロールを行うことが予防に役立つことが考えられます。

高血圧の治療は認知症の予防に役立つか

認知症にならないようにするには、発症と関係のある危険因子を少しでも少なくしておくことが大切です。

 脳血管性認知症の予防には、脳血管障害にならないようにするのが一番です。従って、糖尿病、高血圧症、心房細動などの危険因子のコントロールが大切です。脳梗塞の予防には、抗血小板薬や抗凝固薬の投与が役立つこともわかっています。

 アルツハイマー病の危険因子には、加齢や遺伝因子がありますが、歳を取ることや遺伝因子については何もできません。しかし、高血圧,高脂血症,糖尿病,動脈硬化などがアルツハイマー病になることと関係があることがわかってきていますから、それらのコントロールを行うことが予防に役立つことが考えられます。

日常生活でできる予防法は

日常生活については、定期的な運動がアルツハイマー病の発症を抑えることが示されています。週に3回以上定期的に歩行レベル以上の運動をしたグループでは、運動をしないグループと比べてアルツハイマー病の発生が少なかったことが示されています。75歳以上の人についての研究で、読書、ボードゲーム、楽器の演奏、ダンスなどをすることが、認知症の発症リスクを減少させたことも示されています。(図)

認知症の予防には何をしたらよいでしょうか

 高血圧や糖尿病のコントロール、ビタミンCやビタミンEなどのサプリメント、運動、余暇などが、アルツハイマー病をはじめとする認知症の発症を抑制できるかどうかは、まだ確定されたものではありません。しかし、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病のある人はそのコントロールを適切に行い、日常生活では、適切な栄養を摂り、運動や余暇を行うことが、私たちにできる認知症の現在の予防法であると思います。

豊田さんは

 以上のようなことを聞いた豊田さんは、血圧と血糖を正常にしておくことが大切であるとわかってくれました。しかし、これからも認知症の予防によいということは、何でも取り入れていきたいと言っていました。

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