一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


一般公開講座
認知症シリーズ:第2回 認知症市民公開講座

一般社団法人 老人病研究会は、東京で第2回目の講座を開催しました。

日時:2014年10月5日(土)14:00~16:30
場所:学校法人敬心学園 臨床福祉専門学校 講堂
〒135-0043東京都江東区塩浜2-22-10、地下鉄東西線東陽町下車徒歩10分
共催: 一般社団法人老人病研究会、学校法人敬心学園、学校法人後藤学園、
株式会社舞浜倶楽部、新宿漢方クリニック
後援:セイリン株式会社、株式会社医大サービス 、クレヨンソフト株式会社

今回のテーマ:「認知症を支える家族の安らぎ」

プログラム

第一部は基調講演で、テーマは「介護者と家族の葛藤」
筑波大学大学院人間総合科学研究科 水上勝義教授

第二部 (1)東洋医学の認知症治療とは後藤学園中医額研究所所長 兵頭明
(2)アルツハイマー型認知症の父について木村敦子氏
(3)レビー小体型認知症の母について佐川聖子氏
パネルディスカッション

会の冒頭、一般社団法人老人病研究会川並汪一会長から以下のようなご挨拶がありました。
「超高齢社会に突入した現在、認知症患者さんは460万人で400万人の予備軍がいると見なされます。私ども一般社団法人老人病研究会は「認知症Gold-QPD育成講座」を開催し、医学、介護接遇、中医学三焦鍼法を会得した専門鍼灸師計83名を育成してきました。彼らは現在、南は沖縄から北海道の各地で認知症予防と周辺症状緩和のため大活躍中です。この事業もお蔭さまで文部科学省から認められることになりました。現在そのブロンズコースに相当する基礎的な教科書作りに励んでいるところです。 東京での第二回公開講座では「家族・介護者」をキーワードです。プログラムは、水上教授の基調講演、次いで介護者の声とパネルディスカッションを組みました。有意義な講座を期待します。」

【基調講演】
「介護者と家族の葛藤」~感謝されない介護者~

水上勝義氏(筑波大学大学院人間総合科学研究科 ・精神科医)

【要旨】
認知症介護者は大変なストレス状況にある。生活上の手伝いが増えることによる身体的な負担のほかに、これまでできていたこと、あるいはわかっていたことが少しずつ減ってくる様子を目のあたりにするつらさ、介護のために趣味に費やす時間が減るなどの心理的負担、そして仕事をやめざるを得なくなるなどの経済的損失などが通常みられる。さらに、行動心理症状(BPSD)が現れた場合、心理的負担はさらに増す。ものとられ妄想の対象になったり、暴言、暴力、興奮状態が見られたり、徘徊で目が離せなくなったり、夜間の不眠不穏行動などは家族がもっとも消耗する症状である。介護者のうつ病リスクもきわめて高い。これからは介護家族の心労に注目し、理解し、そしてサポートすることがよりいっそう求められる。

介護家族の心労に
家族が、友人が、医療者が、ケアサービス職が
理解、共感、支持

⇒ソーシャルサポートは最も効果的なストレス対策
ひとりじゃないんだ
自分のわかってくれる人がいる

ご家族のストレス ⇔ 認知症ご本人のストレス
   “皆さんの笑顔を大切に”

パネルディスカッション
東洋医学の認知症治療とは

兵頭 明氏(後藤学園中医学研究所所長 / 天津中医薬大学客員教授)

【要旨】
認知症に対する東洋医学的アプローチの可能性をさぐるため、2009年10月31日に文部科学省戦略的基盤研究・社会連携研究推進事業の一端として開催された認知症国際フォーラムのテーマは、「認知症に東洋医学が挑む」(NHK教育テレビにて全国放映)でした。  東洋医学では、「人」には健康を維持する力、体調を整える力、疾病を予防する力、症状を改善する力、アンチエイジングの力、ウェルエイジングの力などが宿っていると考えられています。この「力」を全人的・総合的にサポートすることにより、ご高齢者の不定愁訴の改善とともに認知症の予防と改善をはかろうという取り組みが行われています。  認知症は現在の医学では治せませんが、鍼灸による全人的・総合的なサポートによって認知症の方の人格の尊厳を守り、認知機能低下の抑制、周辺症状の緩和、ADLの改善、QOLの向上をはかることは可能だと思われます。

「アルツハイマー型認知症の父について」
木村敦子

私の父、○野 ○一のアルツハイマー型認知症の発症は、平成14年でした。
両親は、二人で暮らしていたので、父の介護は母が担っていました。母にとって、かなりの負担だったせいか、ストレスから倒れ入院。 父は施設への入居となりました。
施設での生活に慣れ始めた頃、めまいやふらつき、足のむくみ、排泄困難の症状が出始めました。治療法がない中、施設から鍼治療のお誘いを頂き、「病院でもわからない症状に鍼治療・・・?」不思議な気がしましたが、薬による副作用もないし、何より父のためになる事なら何でもしたいと申し出を受けました。 初めての鍼治療の日は、驚きでした。-膝下の紫色の晴れた血管が消え、足が温かくなる!
あれから5年、認知症や周辺症状がすっかり治ることはありませんが、父も米寿を迎え、鍼治療を休むことなく続け、ゆっくり穏やかに過ごしています。

「レビー小体型認知症の母について」
佐川聖子

71歳の母は3年前に認知障害が始まり昨年、「アミロイドアンギオパチーでレビー小体型認知症」の診断を受けました。家具はひっくりかえし父が近づくと「助けてー。殺されるー。」と叫ぶほどで一緒に過ごす限界が来ました。病院ではアリセプトや新薬の話は出ますが鍼、生薬などを含めた幅広い治療法は教えてくれませんでした。その後縁があり現在は施設で三焦鍼法治療を毎週受け驚くほど落ち着きを取り戻しました。患者家族は良くなればどんな手段でも取りたいものです。私たちの要望に対し介護に携わる方がとっさに理論的に反論したり先延ばしすると本当に孤独に感じてしまいます。介護中の家族の件では、小学生の子供達が「もうばーばはいいから 僕たちを見て!」と目に涙を浮かべて大きな声で訴えられたとき、住居のある14階から何度か飛び降りたいと思ったほどです。今は周知でないのですが、身近に確かめた鍼治療の素晴らしさを改めて強調したいと思います。

次いで川並座長からフロアの参加者よりコメントを求めました。紹介のあった二人の患者様が入所している舞浜倶楽部(介護付き老人ホーム)の下館課長と北島施設長に追加発言を求めました。
下館課長
レビー小体認知症の患者では、当初大声を上げる・スタッフに手を出すなどの行動がありましたが、施術が重なるにつけ、落ち着いてきました。アルツハイマーの患者さんでは、今では鍼灸師さんと会話が弾むようになりました。お二人の患者に共通していることは,今や“笑顔”です。

北嶋施設長
ケアスタッフだけでは、介護できないことがある。我々の施設では、チームとして全体的なケアができるようにしている。

その後フリーディスカッションに移り、医療連携の仕方、ケアマネ・ケアプランの重要性、家族の方々へのメンタルフォローの必要性、患者さんへの最初の接遇の仕方、鍼の三焦療法の良さの説明などが討議されました。
パネリスト4名が、講座全体の印象を次のようにまとめました。
兵頭氏
このようなパネルディスカッションは大変興味深かった。病を見るより人を診ることが必要です。
木村氏
これからも家族や自分が認知症になるかも知れないので知識を深めて行こうと思います。父については“最後の時まで生活の質”を高く維持できるようにしたい。
佐川氏
認知症にはいろいろな治療法があるので多くの方法を教えてほしい。選ぶのは家族です。医療・介護の現場では患者・家族の意見にしっかり耳を傾けてほしい。
水上氏
自分自身が大変勉強になりました。Gold-QPDでは治療の標準化が必要でしょう。西洋医学では二重盲験臨床試験での効果を立証します。坑うつ剤のある薬は、若年者では有効でも、認知症のうつでは差が無いという結果もあります。認知症では「人を診ること」から始め、適切な対応とカウンセリングが求められます。

最後に川並座長が以下のごとく締めました。

今回のパネルディスカッションでは、
1)ご家族の生の声を聴くことと生の映像を見ることができました。
2)鍼灸「三焦鍼法」の大きな効果を提示することができました。
3)鍼灸効果は技術だけではなく施術者の温かい話しかけが重要な意味を持つこと。
4)患者さんに笑顔が戻るような周囲の環境づくりも大切なことが理解できたと思います。
要約は、水上先生が示してくださった最終スライド「笑顔が大切」に一致しました。


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