一般社団法人老人病研究会は、健やかな長寿社会を目指し、健康長寿Gold-QPD事業を実践する。


[Ⅰ] 第2回ブロンズ・コースの実施報告
社団法人老人病研究会事務局

日程: 平成23年6月25日(土)、26日(日)
場所: 日本医科大学同窓会 「橘桜会館」
目的:
認知症Gold-QPD育成講座とは、西洋医学と中医学鍼灸の統合医療による認知症に特化した鍼灸師・医師を対象とした育成講座である。その研修プログラムは、3つのコースでステップアップし、最終的には「認知症Gold-QPD資格認定証」の取得を目指すものである。
① ブロンズコース
  
西洋医学、中医学的視点から認知症と高齢者不定愁訴を深く理解し、高齢福祉社会の課題について高い見識を習得させ、中医鍼灸技法を学ぶ基礎コース。(2日間)
② シルバーコース
  
ブロンズコース修了者を対象に、認知症患者との接遇や介護の基本法を学ぶ。そして健康長寿を目指す経穴中から認知症患者仕様の部位を選び、鍼灸施術を実践トレーニングする臨床コース。(2日間)
③ ゴールドコース
  
シルバーコース修了者を対象に、地域の認定施設において鍼灸治療法を実施する。施術前後にMMSEを計測し、ADL(QOL)の変化を追いながら鍼灸の効果を評価する。(実施診療で数週から数か月間)
「認知症Gold-QPD資格認定証」の授与
  
ゴールドコースで認知症の患者と高齢者に適切な治療を施した効果・エビデンスをもとに、最終試験を実施する。その結果、認知症専門鍼灸師としての称号「認知症Gold-QPD資格認定証」を授与する。

今回、ブロンズコースは全国から26名の受講者が参加し、6月25日(土)、26日(日)の2日間にわたり、日本医科大学同窓会の橘桜会館(文京区)で開催した。

ブロンズコース研修内容:西洋医学系、中医学系、高齢者介護福祉系。


西洋医学系(200分)

講師は北村伸先生(日本医科大学武蔵小杉病院教授)と若松直樹先生(街ぐるみ認知症相談センター、臨床心理士)が分担。

*認知症の基礎的情報の理解、認知症の早期発見・中核周辺症状、認知症の鑑別診断・薬物治療、インフォームドコンセント・社会資源・介護保険等。講義後、25分間のテストを実施。

北村伸 先生
 

中医鍼灸系:130分の講義と100分の鍼灸手技トレーニング。

兵頭明先生(後藤学園中医学研究所所長)が、担当。

*講義内容:中医学理論(高齢者の生理・病理と老化のメカニズム)、認知症の弁証治療(代表的な中医鍼灸治療)、認知症の常用穴、20穴の紹介とそれぞれの効用)等。

兵頭明 先生

鍼灸手技トレーニングは、韓景献先生(天津中医薬大学教授、鍼灸研究所所長、100分)

韓先生は、日本語に堪能であり、懇切丁寧な指導であった。河原保裕先生(埼玉県鍼灸師会副会長)が、アシスタントについた。受講生がお互いに患者に見立てられ、針を振動させながら所定の穴(けつ)に鍼を打つトレーニングをした。


韓景献 先生の実技指導

受講者同士がお互いに患者となり、実技トレーニングを行った。



介護・福祉系(50分+α、公開セミナーの中で、介護福祉の問題が討議された)。

講師はグスタフ・ストランデル氏(高齢者施設の舞浜倶楽部総支配人)と廉隅紀明氏(コミュニティー・ケア ネットワーク代表)。
*講義内容は、高齢者施設における認知症と健康長寿の対策と課題。

中医学の講義、鍼灸トレーニング、介護・福祉の講義終了後、30分間のテスト。
すべての研修が終了後、26人の受講生の全員が、合格と判定され、ブロンズコースの修了証が授与された。その後受講者・スタッフの全員の記念撮影が行われた。
 

ゆったりとした受講情景

[Ⅱ] 一般公開講座  「西洋医学と中医学による統合医療鍼灸コラボレーション治療」

日程: 6月26日14:30~17:20
場所: 日本医科大学同窓会 「橘桜会館」
参加者:26名のブロンズコース受講者に加え、110名余の参加者となった。

参加者の内訳は、鍼灸師だけでなく、医師、薬剤師及び鍼灸関係の業界紙関係者であった。

基調講演:認知症鍼灸法の開発者 韓景献先生(天津中医薬大学教授、鍼灸研究所所長)

三焦気化理論に基づく韓景献式鍼灸法は、健康長寿の考えがベースにあり、脳老化と骨の老化に対しての効果が確認されている。動物実験では、認知症モデルで記憶力の改善、海馬を含む神経細胞の再生、脳血流量の増加、脳代謝の亢進が認めている。最近の研究では、脳への酸化ストレスに対し、タンパク質・遺伝子レベルのマーカーで改善している結果も紹介した。
臨床では、臍中・中院・気海・足三里・血海・外関の6穴が基本処方として挙げられ、具体的症状には弁証配穴を加減する。アルツハイマー病と血管性認知症の435名の患者さんを対象に、この方法での治療を毎週1-2回・12週間にわたって実施すると、MMSE(記憶力テスト)のスコアの改善、見当識、計算力、日常生活能力などの向上を認めている。種々の患者さんでの症例報告も丁寧にされていた。また最近の臨床では、24週間の連続施術により、アリセプト投与群と比較して、MMSEが有意に改善したと紹介した。
 韓景献 先生の基調講演
講演終了後、座長の川並会長から、「韓先生の一連の研究は、医学関係の一流誌に発表されており、 ハーバード大学やNIHなどが注目し、高く評価している」との追加発言があった。

続いて、韓景献式鍼灸施術法をモデル患者2名に対しデモンストレーションを行った。韓先生の高度な技術を近くでもしくは大型スクリーン画面を通して、参加者全員が真剣に見つめ、少しでも学ぼうとしていた。

パネルディスカッション:「統合医療(西洋医学と中医学)による認知症治療の将来展望」

兵頭明先生が治療した認知症患者の家族が出演し、「鍼灸治療を続けることによって、次第に明るくなり、笑顔も出るようになり、先生との会話も生まれた。この経過を見ていると家族としてうれしくなります」との内容がビデオ撮影も含めて紹介された。


  • パネルディスカッション

  • 認知症患者のご家族(女性)と
    対談中のグスタフ・ストランデル氏

それを受けて介護施設のグスタフ・ストランデル氏から、「認知症患者への鍼灸治療は、患者とその家族、施術者、施設のスタッフとの信頼関係が何よりも大切である。鍼灸治療は大きな希望が持てたので、全国の施設で認定鍼灸師が活躍できる日が待たれるとの期待が寄せられた。

川並汪一老人病研究会会長から、Gold-QPD育成講座や公開講座によるセミナーを年に数回もち、さらに発展させながら認知症認定鍼灸師を育成してゆく。そのことで、全国に数十か所の認知症治療の拠点つくりを目指したいとの締めの発言があった。
 終了証授与後の全員の記念写真

なお、今回の受講生26名の所在地は、東京都11名、神奈川県10名、埼玉県3名、群馬県2名であった。

懇親会:2日目の一般公開講座終了後、橘桜会館の別室で、懇親会がもたれた。ビール、ワインを片手に、料理を食べながら、受講生と講師、受講生同士が質疑・応答、意見交換などの交流となった。

懇親会

懇親会で多くの方々からの意見を引き出す川並汪一会長(右)

懇親会での國島修副会長と
田尻孝日本医科大学学長




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